診療と検査

てんかんの診療は患者さんと医療者との共同作業です。
長い道を二人三脚で歩んでいくようなイメージです。
「おまかせ」も「いいなり」も良くありません。
よい診療関係にはお互いの信頼が前提となります。
信頼していただけるような医療を提供するよう努力いたします。



診療案内

1 てんかんとは

2 てんかんの発作と症状

3 てんかんの診断

4 てんかんの治療

5 治療以外のサポート


てんかんとは

脳の神経細胞が一時的に過剰な活動をするのが「てんかん発作」で、このてんかん発作を繰り返す状態が「てんかん」です。
発作の症状や頻度はてんかんのタイプによっても患者さんによってもさまざまです。
原因もさまざまで、脳の病気(脳卒中や外傷など)に伴って起こる場合もあれば、発作を起こしやすい素因が主たる原因のこともあります。
てんかんはおよそ100人に1人の割合でおこる病気です。決して珍しい病気ではありません。また、こどもだけでなくどの年代でも発病する可能性があります。



てんかんの発作と症状

発作症状にはいろいろなタイプがあります。
てんかん発作というと「意識がなくなり、白目をむいて、全身がけいれんして泡を吹いている」イメージをおもちかもしれませんが、 てんかん発作のなかには「けいれんしない発作」や「意識を失わない発作」もあります。
「けいれん」といってもピクピクするものもあれば、硬く突っ張るような症状もあります。体の一部のこともあれば半分のことも全身のこともあります。 けいれんもせず、意識も失わず自覚症状だけで終わる発作もあります。
たいていの場合、発作は数秒から数分で終わり、5分以上続くことはまれです。
発作後すぐに意識がもどる場合もあれば、しばらくボンヤリした状態を経て回復する場合もあります。



てんかんの診断

お話を詳しくうかがうことから始まります。
症状がどのように始まって、途中どのような様子で、終わった後はどうだったか、など、ご自身の自覚症状も大切ですし、周囲にいた方からの目撃情報も大切です。
そのほか、発作の出現した状況や年齢、頻度、これまでの治療歴なども大切な情報です。
これらを詳しくうかがうため、特に初診の診察では時間がかかることをご理解下さい。
まず発作型が何か?を診断し、続いてどういうタイプのてんかんか?を診断します。
発作症状にもいろいろあるように、「てんかん」という病気にもいろいろなタイプがあります。発病年齢と関連するてんかん症候群といわれるタイプもあります。
つぎに脳波検査を行います。てんかんをもつ患者さんでは脳の電気活動の異常が脳波の異常としてふだんから見られることが多いため診断に役に立ちます。
さらにMRIやCTといった画像検査でてんかんの原因を探ります。
これらの結果を総合して、てんかんの発作型、てんかんのタイプ、原因、そして治療方針が決まります。



てんかんの治療

てんかんは治療できる疾患です。
てんかんの原因を直接治療できればいいのですが、そのようなケースはあまり多くありません。
ほとんどの場合、薬(抗てんかん薬)で治療を開始します。6 - 7割の患者さんは薬で発作は起こらなくなります。前提として、診断や薬の選択が正しいかどうかは大変重要です。

また、患者さんによって薬が「合う、合わない」がありますが、使える薬の種類も多くなりましたので「合う薬」に巡り会える可能性は高いです。薬の効果を最大限引き出し、副作用を最小限にすることを常に考え、薬の組み合わせや飲み方などいろいろな工夫をします。
てんかんは慢性の病気ですので、薬は長期間毎日のむ必要があります。てんかん発作を予防し、発作がない状態を続けることが治療の目標になります。 長期間のまないといけない、という点は気が重くなるのですが、決しててんかんだけが特別ではありません。 高血圧やコレステロールの薬も同じで,将来の脳卒中や心筋梗塞の発作を起こさないよう予防的に毎日のむ必要があります。

薬の中止が可能かどうかは、てんかんのタイプやそれまでの経過にもよります。また、中止するタイミングについても患者さんの現在と近い将来を見据えたうえでよく話し合う必要があります。

残念ながら発作が薬で治まらない3 - 4割の患者さんでは薬以外の治療法も検討します。
外科的な手術で発作をよくできる可能性がある場合は外科治療が可能な医療機関をご紹介します。なお迷走神経刺激療法(VNS)後の刺激調節は当院でも可能です。

また、ケトン食療法 が有効な場合もあります。
当院では、ケトン食療法の経験豊富な栄養士による説明・指導も行っています。
ただし、開始する場合は専門医療機関での導入が必要になります。

ケトン食療法についてはこちらをクリック



治療以外のサポート

発作が止まればそのほかの問題はないという場合でも、就職や運転免許取得、妊娠・出産を考えるときにはてんかんや薬のことを意識するでしょう。一部の職業や資格にはてんかんのために制限されるものがあります。
何が制限されるのかを事前に知っておくことは学校や職業を選択する際に必要です。
また、こどもが欲しいと思ったとき、飲んでいる薬によっては生まれてくるお子さんに影響が出やすいものもあります。
よりリスクの少ない薬に変更することが出来る場合もあります。また、発作が落ち着いていれば妊娠前に少しでも薬を減らせるかもしれません。
今後経験されるライフイベントに備えて、新しく正しい情報を提供し、どのタイミングで何をしておく方がいいかを話合いながら進めます。

次に、発作が止まっていても学校生活や社会参加がうまくいかない場合もあります。
発作以外の併存症(たとえば学習障害や発達障害)があるためかもしれません。
診断と特性に合った療育や適切な支援によって生活しやすくなることも珍しくありません。知的な面で問題がある場合は神経心理検査で客観的に評価し、無理のない学級や就労を考えた方が結果的に上手くいくこともあります。専門的な診断や評価が必要と考えられる場合は関連の医療機関や支援機関と連携します。

さらに、発作が難治なために日常のなかでさまざまなサポートが必要になることもあります。発作以外の併存症がある場合も多いケースです。上で述べたような評価や対応がなおいっそう必要になります。また、利用できる制度も多くなります。精神障害者手帳を利用した障害者就労や就労支援サービス、条件を満たせば障害年金の取得などが可能です。発作や併存症がありつつも社会に参加して人とのつながりを維持することは生活の質を保つ点でとても大切です。関連する社会資源、支援機関と連携しサポートしていきます。



てんかんの検査

脳波検査、MRI、血液検査などを行います。


脳波検査

てんかんの検査で最も重要なのは脳波検査です。脳が出す弱い電気を波として記録したのが脳波です。てんかんをもつ患者さんでは脳波に異常や乱れが見られることが多く、発作やてんかんのタイプによって特徴的な異常が見られる場合もあります。そのような診断に役に立つ脳波異常をできるだけ効率よく検出するため、目の前でフラッシュライトをチカチカさせたり、深呼吸を続けてもらったり、軽く眠っていただくことがあります。 1時間程度の脳波検査では必ずしも異常が見つかるとは限りません。1回の検査では異常がみつからなくても、繰り返し行うことで異常が見つかることもあります。また、治療によって脳波の異常が改善したか、悪くなっていないかなどを確認するために検査を繰り返し行う場合もあります。
当クリニックでは落ち着けて眠りやすい環境を提供するため、すぐれた防音機能を有する脳波室を用意しています。
診断のために長時間ビデオ脳波検査が必要な場合は検査が可能な医療機関にご紹介します。

MRI

てんかんの原因を調べるために大切な検査です。先天的な、あるいは後天的ないろいろな異常がてんかんの原因になります。脳の構造に異常がないか、異常がてんかんの原因なのかを調べます。はじめは異常と見えなくても、発達や経過によっては異常と認識できるようになる場合もあるため繰り返し検査することもあります。また、MRIで異常が見つかり、それが時間とともに変化する可能性がある場合には、間隔をあけて繰り返し検査してチェックします。
MRIは当クリニックでは行っておりません。必要な場合には提携している画像専門の医療機関に依頼します。



血液検査

初診時の血液検査は、現在の健康状態をチェックし、薬を開始する前のデータとして重要です。多くはありませんが、てんかんでない発作の原因が分かる場合もあります。すでに薬を飲まれている患者さんでは薬の血中濃度や副作用を把握するためにも行います。 抗てんかん薬での治療中には、薬の血中濃度を把握し、副作用がないかの確認のために定期的に血液検査を行います。とくに薬の調節中は繰り返して行う必要があります。



その他の検査

てんかんが疑われるが診断の根拠が乏しい場合、てんかん発作でない発作(心因性など)が疑われるがてんかんが否定できない場合には長時間脳波ビデオ同時記録検査での検査が必要になります。また、てんかんの原因を探るために上記以外の検査が必要になることがあります。特殊な血液検査、遺伝子検査、脳脊髄液検査、誘発電位検査、 PET検査などです。 これらが必要と思われる場合は施行可能な医療機関にご紹介します。



地域病院、てんかん専門病院との連携

背景疾患の診断や治療、合併症の検査や治療、てんかんの診断のためのより詳しい検査あるいは外科治療、食事療法の導入、より高度な治療が必要と思われる場合には、患者さんのニーズに合わせて以下の病院を含む地域のクリニック、病院と医療連携を行ってまいります。


北野病院
大阪市立総合医療センター
大阪市立大学医学部附属病院
大阪大学医学部附属病院
大阪旭こども病院
静岡てんかん・神経医療センター
国家公務員共済組合連合会 大手前病院
大阪警察病院


受付時間
9:00 ~ 12:00
14:30 ~ 19:00

休診日:木、日、祝

  ◎:土曜日は 9:00~14:30



診療科目 脳神経内科、小児科 、 精神科
院長名 池田 仁 (いけだ ひとし)
住所 〒530 0041
大阪府大阪市北区天神橋2丁目4-16
大研ビル 2F

※当クリニックの建物のエレベーターは通常の乗用タイプです。リクライニングタイプの大きいものなど、一部の車いすは入れない可能性があります。

電話番号 06-6357-0319 ( 予約制 )
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